NPO幸福の国
「幸福の国」とは?
「幸福の国」とは、ブータンミュージアムの運営、活動を支える団体の名称です。この団体の事務所が存在する自治体である福井県に、特定非営利活動法人(NPO法人)「幸福の国」の設立を申請して、2012年8月29日に認可されました。さらに、2019年9月には、法人活動支援のための税制措置が受けられる認定特定非営利活動法人としての資格も与えられました。
特定非営利活動法人「幸福の国」の設立の契機
1972年ブータンの国王に即位した第4代国王は、2006年9月自ら国王の座を現在の第5代国王に譲るまで、着実に政治改革を進め、国民参加型の民主的な政治体制を実現しました。特に2001年には国王の勅令により、憲法起草委員会を創設し、2005年には国王自らの定年制や国民投票による国王解任制度を含み、立憲君主制の下で、議会制民主政治を志向する新憲法草案を公表させました。第5代国王の戴冠式が行われた翌年の2008年に、憲法草案に基づく下院議員選挙、その結果による新首相と内閣の誕生、国会の召集とそこでの憲法とその他の法案の採択などを経てブータンの憲法が公布されました。ブータンの国民は国王に対して深い敬意と信頼をもちながら、国王の指示に従ってきました。しかし、これらの政治的変革によって、ブータンは国王親政と呼ばれる安定した政治体制から、民主主義立憲民主制に移行したと考えられます。
1979年、即位してから7年後、24歳の第4代国王は国際会議からの帰国の途中での記者会見で「Gross National Happiness(GNH)は、GNPよりも大切である」という考えを表明しました。 憲法では第九条第2項で、「国はGNHの希求に成功できる状況に発展するよう努力する」と宣言されていますが、GNHの理念は憲法の全体を支配する基礎的概念として埋め込まれました。また、2院制の議会制民主主義が順調に発展していく中で、GNHに関する国民の実態調査や、GNHの考え方をさらに深めようとする研究も続けられてきました。
世界的には2000年代に入って、これまでのように経済的な発展を最優先させる政策は、必ずしも人々の幸せが得られるものではないという考え方が、世界の人々の間で一般的になってきました。特に国連では、2000年には世界の国々の発展目標として、8項目のMDGs(Millennium Development Goals:ミレニアム開発目標)が打ち出されましたが、2015年には、2030年までの目標はさらに範囲が拡大されて、17項目のSDGs (Sustainable Development Goals:持続可能な発展目標) が掲げられました。これらの発展目標の指標が決定される上で、GNHは先導的役割を果しました。
一方、日本政府はこれまで国の経済成長率を指標としてGDP (国内総生産)の増大を目指してきましたが、2010年ごろから、国民の幸福度を開発指標とする研究が、内閣府経済社会総合研究所において本格的にスタートされました。また、国内の自治体の中に、ブータンのGNHの考え方を積極的に取り入れながら、独自の住民の幸福を追求する政策に取り組むいくつかの自治体も現れてきました。
福井県においても、地方行政の方向性や将来像を明らかにするために、政策決定の新たな手法の研究がスタートされました。まず、将来や次世代の人々が「幸福」を感じながら暮らすことができる社会を構築するためには、「希望」をもって行動していることが最も重要あると考えられました。「幸福」を感じながら、自分の将来や次の世代を良くしたいと願う「希望」を持った行動を誘発するために、行政は何をすべきかを明らかにすることを目的に、福井県知事が中心となって、他の10県の自治体と共同研究を行う「ふるさと知事ネットワーク」という組織が立ち上げられました。2012年3 月には、それまでに進めた政策研究の成果が報告書として公開されました。
2011年11月にブータン国王は、その前年のブータン-日本国交25周年を記念することと、その年に起きた東日本大震災の被災者を見舞うために、日本の国賓として、王妃とともに来日されました。国王夫妻の来日を歓迎するために、日本政府とブータン政府によるレセプションが開かれましたが、そこに当時の福井県知事も参加しました。その際に地方行政の将来像について共同研究を進めるために、ブータンと福井県との両国の間で人的な交流を計りたいという申し出を、親書として国王に直接渡されました。その翌年の3月に、ブータンのGNH研究の第一人者であり、国立ブータン研究所の所長であったダショー・カルマ・ウラ氏が来日し、同研究所と福井県が、福井県の出した申し出に沿った研究で相互協力することを約束する覚書に調印しました。
これらの出来事によって、福井県とブータンとの間で、力強い交流の懸け橋ができ、福井市内にブータンミュージアムを創ろうとする気運が高まりました。
特定非営利活動法人としての活動の目標
わたしたちは、より多くの人がブータンに対する関心を持ち、より深くブータンを理解することによって、日本とブータンとの間の国際親善および国際協力の発展に寄与することを願っております。またこの目的に沿った活動を通して、ブータンのみならず、世界の各国との同じような国際交流を支援したいという人々の願いも大切にします。結局、私たちがどのような社会を目指すかを考える上での有用なヒントが得られるような活動を行います。また地域社会に貢献する特定非営利活動法人(NPO法人)としての役割を考慮し、地域社会の人々の将来の福祉向上(ウェルビーイング)につながる活動も行っていきたいと思っています。