ブータンは厄介な国に向かっているのか?

2023年5月13日

ツクテン・ザンポ

 多くの人が留学や仕事のために海外に出て行くことや出生率が低下していることにより、多くの人が高齢化の進むこの国の経済成長は難しくなるのではないかと心配し始めている。

 懸念されることは、より良い就職の機会を求めて移住しているのは、工学、医学、教育、情報技術などの専門技術を持った国民だけではないということである。

 さらにそれだけでなく、移住している人、または移住を計画している人の大多数は、国の生産的な経済の構築に貢献できる若い人や、経済的に活動的な人たちである。

 政府は今年1月に、3万人以上のブータン人が113カ国に海外に住んでおり、そのうち約1万2千人がオーストラリアに住んでいることを認めている。

 今年3月までの過去9か月間で約1万人のブータン人がオーストラリアのビザを取得したということは、人口の少ないブータンとっては、とんでもなく大きな人数に思える。

 オーストラリア統計局の統計によると、2021年のオーストラリア国内のブータン人は約1万2000人で、2016年の5953人のブータン人からほぼ倍増した。

 2001 年から 2010 年の間に、1,579 人以上のブータン人がオーストラリアに到着した。 この数は、2011 年から 2015 年の間に 3,290 人に増加し、2016 年から 2021 年の間に 6,993 人に増加した。

 王立公務員委員会の統計によると、2021~22会計年度に1,462人の公務員が離職し、そのうち約70パーセントに当たる1,023人が志願退職した。 離職率は4.6パーセントであった。

 同様に、2020-21会計年度には公務員779人が退職し、そのうち58.9パーセントに当たる459人が志願退職した。

 政府はまた、今年初めに医療と教育部門の離職率が7.5%、8%に達していることを確認した。

 今年1月から5月までに教員531人が辞職し、そのうち416人が志願退職した。 2022年に退職した教員478人のうち、307人が志願退職であった。

 同様に、今年1月には15人の看護師が退職し、2019年から2022年の間に374人の看護師が離職した。

 世界保健機関は、医師と人口の比率を 1:1,000 とすることを推奨している。 しかし、ブータンには人口 5,000 人につき 1 人の医師がいることになっている。

 人手不足は国内のあらゆる組織、あらゆる部門で顕著になっている。 ほとんどのブータン人は目的地としてオーストラリアを好み、特に清掃員、タクシー運転手、労働者、介護者などとして働くことを好んでいる。

 ブータンは出生率の急速な低下と人口高齢化が懸念されており、そのことからも、大量の国外流出は懸念されている。

 ブータン国の出生率は、1982年の女性1人当たりの子供の数は6人だったが、2017年には1.9人、昨年は1.8人にまで低下しており、世代交代における出生代替率の子供の数2.1人を下回っている。なお、出生代替率(replacement rate of fertility)とは、人口の大きさが安定に維持されるために、女性が産まなければならない子供の数で、それより平均的な子供の数が少ないと人口が徐々に減少することを意味する数である。

 アジア開発銀行の調査によると、ブータンの最初の人口ボーナス(生産年齢人口が増加し、依存負担の大きさが軽減される人口動態変動の一つの現象)は、支持率(扶養家族に対する生産年齢人口の割合)が上昇し続けるため、2038年まで続くと予想されている。

 さらに、2038年以降、生産年齢人口に占める割合の減少に伴い、配当金(人口動態変動から生ずる人々の恩恵)は着実に減少し、人口税(人口動態変動から生ずる人々への負担)に変わると予想されていると付け加えた。

 同世銀は、秋以降の支持率が65歳以上の人口に占める割合は1990年の2.8%から2025年には6.9%に増加し、2050年までに15%以上に達すると予想している。

 今後 25 年間で、国内の 65 歳以上の高齢者の数は 2 倍以上に増加すると予想されている。 2022 年に 50,715 人だった高齢者の数は、2047 年までに 118,650 人に達すると予想されている。

 労働力調査報告書によると、ブータンの生産年齢人口(15歳以上)は2022年に484,965人であった。2037年までに15歳から64歳までの602,673人になると予想されており、そのうち117,866人が65歳以上となる。

 「ブータンの人口ボーナス段階では、人口統計は推定で毎年 1.6 パーセントポイントの経済成長をもたらした可能性がある」と アジア開発銀行は述べている。

 人口ボーナスが見込まれる国は、良好な健康、質の高い教育、適切な雇用の恩恵を享受し、その結果、経済的優位性がもたらされる可能性がある。

 しかし、多くのブータン人が海外へ流出することで、国内の経済活動や生産性が低下する可能性がある。

 給与改定案後に公務員が大挙して退職すれば、国のジレンマがさらに深まる可能性がある。

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