ルナナの少女は、村を救うために世界的な行動を要求
2022年9月28日
ブータンの外務大臣が国連総会で、ルナナ小学校2年生の少女のメッセージを読み上げた・・・
ニマ・ウォンディ
タンディ・ドルジ外務大臣は、ブータンで最も遠隔地にあるガサ県のルナナ小学校のクラスII(2学年)の生徒からの手紙を、ニューヨークで開催された第 77 回国連総会 (UNGA) で発表した。
その少女(チミさん)は、地球温暖化の影響で氷河が融けて、山中の氷河湖がより大きくなり、川の下流にある彼女の村が、洪水の危険に脅かされていること(注:1)に懸念を表明していた。
「ここにいる世界の指導者たちに彼女のメッセージを伝えるように頼まれました」と外務大臣は述べ、チミさんが住んでいる地域社会の人々は常に洪水を心配していると付け加えた。 さらに「7 歳の少女は、彼女の村を救うために世界的な行動を起こしてほしいと要求しています」と述べた。
外務大臣によると、これはブータンに限ったことではない。人類が引き起こした気候変動の影響により、世界中の人の生命と生活が危険にさらされている。 「私たちの若者とその後の世代の未来は、差し迫った脅威にさらされています」と付け加えた。
大臣は、軌道修正に着手する時間はまだあるが、その機会は急速に閉ざされようとしていると述べた。 「そのすべての結果に対処するための最も弱い立場の人々の努力を支援するために、気候変動に適切な対策を実行し、すべての国からのより大きな連帯と協力が必要です」と彼は述べた。
さらに大臣は、化石燃料への依存を減らすためには、特に製造業や輸送部門において、代替再生可能エネルギーへの投資を拡大するための実行可能なプロジェクトやパートナーシップを考え出す際に、強力な国際協力を築く必要があると彼は述べた。「ブータンは、異常な早さで進む気候変動に対する対策の緊急性が、今年の 11 月の COP27 (注:2) で留意されることを強く望んでいます」とも述べた。外務大臣は世界が水、食料、エネルギーの危機に直面し始めているため、持続可能な山岳開発への投資は世界的な優先事項であるべきだと述べた。さらに、山の地域社会は、自然とその周辺に調和して生活できるようにする必要があると述べた。
意識を高めるために、ブータンはスノーマンレース (注:3) を開催するが、このレースには、世界中の精鋭のスポーツ選手が参加し、標高 5,000 メートルのヒマラヤ山脈を横切って走るマラソンコースである。より多く人の行動と、より大きなパートナーシップを生み出すことが期待されている。
外務大臣はまた、人口の90%以上が新型コロナの予防接種を受けていることを議会に提示した。彼はワクチンを寄付した国々に感謝した。
「私たちの共通の課題は『ターボ チャージ』(注:4)の将来への指針を提供し、2030年への課題と持続可能な開発目標の達成に向けた行動を加速する必要があります」と大臣は述べ、ブータンは GDPを越えて将来を見直す必要性を報告書が認識したことを歓迎すると、付け加えた。
大臣は公共サービスの提供を強化するために、ブータンで主要な変革取組みが進行中であることを発表した。 「専門的技術等の説明責任の基準を確保するために、公共部門全体が合理化され、能力と実績の面で強化されます」、「私たちの公務員は、より優れた迅速な公共サービスで市民に奉仕しなければなりません」と大臣は述べた。
「国連を中核とする多国間主義に対するブータンの深い関与は揺るぎないものです」と大臣は述べた。 「ブータンは、国連憲章に掲げられた崇高な目標に全力で取り組んでいます」
昨年達成された国連加盟50周年に合わせて、ブータンは国連の重要な柱であり、目的である平和と安全の維持に貢献するという呼びかけに応えている。彼はブータンがその最初の基準に従った制服を着た軍事部隊、国連平和ミッションへの迅速活動部隊の配備の準備をしていると述べた。
数週間後に MINUSCA (注:5) の平和の使命を携えて、よく訓練された隊員が到着する。大臣は「彼らが際立った名誉をもって国際社会に貢献すると確信している」と述べた。
訳者注
(注:1)ブータンの北部でチベットとの国境に近い領域は、ネパールから続くヒマラヤ山脈の西の端にあたり、海抜6000mから7000mまでのピークを持つ高山が並んでいる高山地帯である。そこは岩と氷の世界であり、山の麓に向かって氷河が流れている。氷河はこれまでそこから流れ出す河川に、安定した水量の水を供給して、ブータンにとって最大の外貨を稼ぐことのできる産業である水力発電を支えてきたが、近年の地球温暖化によって氷河が融けて流れ出る水量が増して、川の流域での洪水や地滑りを起こすという地域の人々に差し迫った脅威を与えている。これまで大規模水力発電のプロジェクトを次々と進めて、国の経済の面での健全化および発展を目指していたが、気候変動の問題はこの見通しに、見過ごせない影を落とすようになった。そのため政府の方針として、先進国と肩を並べるような技術立国を目指そうという国の発展計画も明らかにされている。
(注:2)COP27:「COP」は「締約国会議」の略であり、気候変動に関してのCOP は、国連気候変動枠組条約 (UNFCCC) の下での最高意思決定フォーラムである。このフォーラムで気候変動とその影響に対して協同で対処する方法について、毎年1回議論されてきた。最初の COP である COP1 は、1995 年にドイツのベルリンで開催された。京都議定書はCOP3で、パリ協定はCOP21で合意された。今年の11月6日からエジプトで開かれる予定のUNFCCCがCOP27であり、 ブータンはCOP27で後発開発途上国の代表として出席することになっており、その与えられた役割を十分に果たすよう現在国を上げて準備している。
(注:3)スノーマンレース:ブータンは、世界中の人々の気候変動に対する危機意識や自然環境保護の意識を高めるために、世界で最も過酷なヒマヤラの高地を通り抜けるマラソンコースを設定して、世界のトップレベルのアスリートが競うフットレースを開催する。コースは、ガサ県にあるガサ・ゾンを出発点として、コースのほとんどをブータンで最も厳しいトレッキングルートと知られているスノーマン・トレッキング・ルートに沿って進み、ブムタン県のジャカールに近いチャムカーという場所を終点とする、距離203 km、コース平均標高4267mのルートになっている。このレースは、今年の10月13~17日の5日間の日程で行われる予定であり、インターネットのウェブサイト上では、約30名のレースの参加者の氏名が公表されている。
(注:4)ターボチャージ:一般に自動車エンジンなどの内燃機関の内部の気圧を高くして、過給状態にして燃料効率を上げる技術であるが、ここでは水力発電や風力発電などで液体や気体が持つエネルギーを電気のエネルギーに変換する効率を改善しようとする技術と思われる。
(注:5)MINUSCA:中央アフリカ共和国における国連多次元統合安定化使節団