「国際幸福の日」について(投書)

2021年 3月 20日

 約40年前、当時世界最年少の国家君主であったジグメ・シンゲ・ワンチュック陛下は16歳から17歳で、非常に功利的、近視眼的、還元主義的な国内総生産の尺度によって測定される従来の社会的進歩の概念に、異議を唱えた表現としてのGross National Happiness :「国民総幸福量」と呼ばれる総体的開発概念の新たなビジョンが、今日のように世界的な注目を集めることになるとは、誰も気づいていなかったであろう。

 まだ10代の頃のブータンの若い国王が見た世界は、それが本当に展望なく、目標なく、品位なく見えた。それは、社会面に無謀に運ばれた適者生存の破壊的な原則に基づいて戦われた無法地帯での戦いによって消費された世界であった。国王はこのゼロサム・ゲームが人類の悲劇的な人間性の抹殺、地球の限りある資源の持続不可能な搾取、そして非常に不公正な世界の創造につながることを認識した。

 何かが正しくなかった。大いに宣伝された一次元的の開発の物語は、人間と社会の進歩の多次元の物語の多くの重要な要素を排除した。ドラゴンキングの明確な映像は、幻想を突き破り、常にそこにあった真実が露わになった。時間と空間を超えたすべての人間の最も情熱的な欲求は幸せであり、人類の最も基本的なニーズは、必ずしも物質的または物理的なものではないということである。人生には意味と価値を与える他の非経済的または、非物理的な要素が存在する。

 国王の崇高な心は、人は持っているものが、多ければ多いほど幸せになるという妄想を切り捨てた。 実際、物質的な所有のレベルは、多くの不幸とストレスの原因となる可能性がある。そして、生産と消費の際限のないサイクルを、称賛される歳入や収益として、GDP学識者によって高く評価されていることは、人生の目標であってはならず、またそうではありえない。

 ブータンにとって国王はしたがって、多次元の価値観に基づくユニークな視点を持っていた。それは相互に助け合うわれらの母なる自然全体のしあわせを確実にするために地球規模の枠組みの中で、多様な生命と生活を追求するものであり、次に続く世代の人々、そして海や陸、空に生きるものたちの持続可能性を確実にし、その社会のすべての人々にとっての正義と平等を意識的に作り上げ、育み、我々の豊かな文化遺産の美徳と価値を、注意深く、賢く実現し、そして公共サービスとして良いガバナンスを促進しようとしている。

 これまで人々は耳をつんざくような音楽と呼ばれてきた、持続不可能で搾取的な開発モデルの避けられない結果に懲らしめられていたが、より心地よく円熟した世界において、謙虚なブータンの人間の進歩のすべてを包含するモデルは、歯についての貴重な香油(balm)に例えられて、魂をそっとむしばまれることから救うものであることを発見している。

 ブータンの包括的で、持続可能な国民総幸福量のよく考えられた開発ビジョンは、世界中の多くの国で歓迎されており、個人や機関が人間の苦境の残念な状況を見て、深い魂の探求を行うように強く促している。国連総会は、「幸福の追求を開発の基本目標」にするというブータンの提案を承認し、3月20日はその世界集合体によって「国際幸福ディ」と宣言された。ブータンの全体的な発展のビジョンの研究と理解に専念する多くの機関、クラブ、財団、および学術プログラムが世界中に設立されている。

 たとえば、多才で著名な人道支援活動家であるリウス・ギャラード(Lius Gallardo)博士が関連機関と協力して設立した(World Happiness Foundation:世界幸福財団)は、この団体で活動する指導者や個人を組織して、会員を増やし、人々が自由で、高い意識を持ち、幸せな世界を実現するために活動する機関である。

 この財団は、情報公開、連携、感謝、および、思いやりの重視の価値観に基づいて構築されており、約1,000万人の教育者、800万人の医療専門家、700万人の企業および政府のリーダーを関与させることにより、2050年までに100億人の幸せな人々のための環境を作り出すことを目指している。

 今週の3月18日から23日までの6日間、世界幸福財団の主催で、多面的な世界幸福フェストが開催され、地球上で最大かつ最もアクセスし易いウェルビーイングと幸福に関するデジタル・サミットが開催される。推定16万人の参加者、150人のウェルビーイング専門家、120のワークショップが開催され、世界中の約80の都市からライブ発信(ストリーミング)が行われる。

 財団は諮問委員会委員によって運営されている。その組織の導きは衝撃的である。

 国際幸福ディを祝うにあたり、ブータンと世界へのこの貴重な贈り物に対して、国民総幸福量の包括的なビジョンの神聖な泉、尊敬するドゥク・ギャル・ジパ、ジグメ・シンゲ・ワンチュク陛下に深く敬意を表す。

 また、あらゆる分野のすべての人々と衆生の幸福と幸福の大義を推進するためにたゆまぬ努力をしている世界中の善意のすべての男性と女性に感謝の意を表す。

 現代の最も偉大な政治家の一人の崇高なビジョンに触発されたこの特別な日、世界が私たちの国をビジョンのない世界の珍しい希望のオアシスと見なしているときでさえ、私たちは、国家として、そして人々として、私たち自身の魂の探求を行っている。

 国民総幸福量は、他の多くの重要な国家プロジェクトと同様に、まだ進行中である。 私たちの考えと行動を、政府、官僚、議会、憲法に関わる機関、政党、非政治機関、民間部門、市民社会、個人および一般市民としての国家ビジョンに合わせることが私たちの義務である。 私たちは確かに、私たち国民の最愛の国王の無条件の世話と思いやりに、もっと報いる余地がある。

 私たちの社会と国の幸福が真価を問われたとき、私たち一人一人の態度と行動に係ってくる。 確かに、私がそうであるように、私の国もそうである。

 全能者が私たちの貴重なTsa-wa-sum(ツァワサム:訳者注:ブータン国王に寄り沿って、国王、国家、国民を一体化して呼ぶブータンの伝統的な言葉)を祝福し、平和、幸福、幸福とウェルビーイングが永遠に地球に広がるように。

 寄稿者 タクール・S・パウディエル、前教育大臣

Joomla templates by a4joomla